今日の読了本

津原泰水 『アクアポリスQ』

例えて言うならば、水没の危機を待つヴェネチアのようで。
そこに和・洋・中のメニューをぶち込んだらどのようになるのだろうと妄想して。
火山灰、火山ガスのために帰れない島の人々を夢想する。
分量としては長編と言うよりは中編のごとき長さなのではあるが。
かくのごとき幻想を脳内で再生させるその妄想力は凡百の大長編を上回る。
滅びゆくものを愛でるというのは主に日本人が感じる美の要素であるといえようが、
この作品は、枯れゆく桜に不可思議な呪術を施して延命を施すようなものかもしれない。