今日の読了本

時雨沢恵一 『キノの旅IX』

十一本強の短編が収録されている本作。
何よりアイデア一発勝負と言った感じの作品が並ぶ。
常々思うのだが、ライトノベル界において星新一のようなポジションを確立しようとしているのだろう。
あくまでもショート・ショートという分野に於いてだが。

小学六年生が同級生に殺害されるという痛ましい事件があった時、彼女の自己紹介、好きな本の項にこのシリーズが記されていた。
その当時、自分の好きな本は、と考えた時、宗田理星新一の名が即座に上がっていただろう。
時代は変わっていく、と言うことを強く感じた一幕であった。

西澤保彦 『フェティッシュ

このごろ本格か否かという論争が喧しいですが、そんな論争は何処吹く風といった趣で、ちょっとどころじゃなくはみ出た形の本作が刊行された。
『ファンタズム』のような、ジャンルを確定されるのを拒むような空気がこの作品には満ちている。
ミステリとして見た場合、比較的早期に仕掛けは割れてしまうので、見かけ倒し感が強いのは否めない。
とはいえ、物語としてみた場合、ある種トリッキーな仕掛けがあるわけで、それを楽しみにしている私としては非常に楽しく読み進められたのでありました。