今日の読了本

「旧宮殿にて 15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦」 三雲岳斗

レオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役に据えたミステリ短編集。
本格ミステリ05」に採用された「二つの鍵」の論理の冴えは素晴らしいが、他はそれと比べると少々落ちる。

「やさしい死神」 大倉崇裕

東の落語シリーズ。
奇しくも「落語」を用いてミステリを書いている二人*1が関西出身というのは何か因縁めいたものを感じます。
落語との融合、結合ぶりではこちらの方に軍配を上げる。

「煉獄のエスクード 1」 貴子潤一郎

エスクード=楯。 自動車の名称にも取られていましたが、そのような意味だったとは。
作品中では明記はされていませんでしたが、これも立派な吸血鬼ものの変形。
キリスト教をメインガジェットに据えるにあたり、やはり敵の造形としては吸血鬼を選んでしまうのでしょうか。

アスラクライン」 三雲岳斗

奇しくもこの作品も、キリスト教をガジェットの一部として活用している。
とはいえ、著者が異なるとこうも使い方が異なるのか、というくらい、利用している部分が違う。前者はヴァチカン内部を。本作はキリスト教の分派ぶりをかくも活用している。
イラストレータがシリアス寄りの絵を描く人だったならば、きっと本編を読んで受ける印象が変わっただろうと思う。
現状だとどちらかというとコメディよりのアクション。仮定が堅実になれば真面目な四角四面、整ったアクションもの(敢えて他の作品を例に挙げるとするならば、「からくりサーカス」的なもの)になっていただろう。