瀬名秀明 『第九の日』

第九の日 The Tragedy of Joy

第九の日 The Tragedy of Joy

この≪ケンイチ≫シリーズは、時系列順に読むべきである。
つくづく、そう確信させる短編集であった。
「メンツェルのチェスプレイヤー」だけは、『デカルトの密室』よりも前に読まねばならぬ。
ネタバレこそないものの、最後に明かされる趣向が無に帰すゆえ。
「モノー博士の島」だけは、『デカルトの密室』読了前であっても問題はないが、
それ以降の二編「第九の日」「決闘」は、『デカルトの密室』で描かれた事件が前提となっているため、
読了済みでないと大いに差し支えることこの上ないだろう。
ロボットとは、人間の意識・知性とは何なのだろう。
そういった哲学的な問題、答えの見えない問いかけに、答えを出そうという試みは、
非常に心揺さぶられるものがある。
ある意味、≪矢吹駆≫シリーズとオーバーラップするところがあるのかもしれない。