恩田陸 『チョコレートコスモス』

チョコレートコスモス

チョコレートコスモス

また、『ガラスの仮面』を、再読したくなった。
一度目は、昨年のアニメ化で。
二度目が、本作を読んだことで。

恩田陸の作品、読んだ中で一番を挙げてみろ、と言われれば、迷わず『ロミオとロミオは永遠に』を挙げてしまう。
夜のピクニック』も捨てがたい。けれども、あの野放図さを、わたしは偏愛するのである。
わたしの中で、それに並び立つ作品になった。

演劇界を舞台にする物語だ。だから、『ガラスの仮面』の影響は否定できないように思う。
ほとんど容易に、同じようなポジションに立つキャラクターを引き出すことができるから。
ガラスの仮面』へのラブレターのような、作品なのかもしれない。
抑えきれない情熱を、かたちにしたら、こんなかたちになった。そんな趣をたたえている。
そんな情熱が、読んでいるわたしにも、届いてくるのだ。
なんだか理解できない情動を、持て余す子どものように。

原型となったであろう作品が、容易に想像できるのは、欠点なのかもしれない。
けれど、それを上回る何かを、その作品が持つことができたなら、その欠点も、
大きな傷には、ならないだろう。
その点で、この作品を低く見る人がいるかもしれないが、
わたしは、この作品で、十分に、心揺さぶられてしまった。
心奪われてしまった。
続きは、きっとないだろうと思うけれども。
なんだか期待してしまう、今日このごろなのでありました。