今日の読了本

佐々木俊介 『繭の夏』

スリーピング・マーダー*1もの。
この形式はアガサ・クリスティが得意としていたがこの作品はどうだろうか。
冒頭からなにやら沈鬱な雰囲気が漂っている。
主人公たちの親類縁者はことごとく不幸にあって死ぬか表舞台から退場しているという。
彼らの行動を自由にするためなのかもしれないが、結末の後味の悪さを増幅する効果をもたらしていてあまり気分が良くない。
とはいえ、ミステリとしての結構はといえば実に真っ当、正当派。
バッドエンドという意味ではない後味の悪ささえ許容できるのならば、良作であるといえよう。

*1:回想の殺人=昔の事件掘り返し