今日の読了本

アフターダーク村上春樹
夜明けまえ。そんな言葉が似合う。
ヴァン・ダインの小説を思い出した。小節ごとに時刻が記載されていることで。
映画の脚本かと思った。一人称が「私たち」。作者のカメラを通じて私たちはこの作品内の出来事を見ている。部分的に脚本めいた書き方をしているところもあった。映画でなくてもドラマでも良かっただろうが、やはりこの作品に似合うのは、「映画」だ。ドラマの脚本にしては、掘り下げ方が甘い気がするのである。だから、「映画」。
呼んでいる時に感じる妙な違和感の原因が、今回はそのせいだと、わかった。だから、今回は、そんなに恐れずに、読むことができた。
読んでいて、同じ村上の、龍の方の、「ライン」を思い出した。
あちらは短編集であるが、緩やかにすべてつながっていて、その、緩やかなつながりが、似ている気がしたのだ。ただ、そのつながり方が、こちらの方が、輪を掛けて緩い気がした。それは、現代の人と人とのつながり方が、ますます緩くなっていっていると言うことを表しているのではないだろうか、と感じた。