有栖川有栖 『乱鴉の島』

乱鴉の島

乱鴉の島

鴉飛び交う孤島での、殺人事件。
ミステリ読みが期待するような、鬼面人を驚かすようなトリック、鮮烈な事件は存在しない。
ただ、そこには不思議な論理があるだけだ。
『モロッコ水晶の謎』ほど不思議な論理ではない。比べれば至って平易な謎と思われる。
ただし、それより兆した種、それを育てている様子がうかがい知れる。
初期の作品のような純粋さはない。老獪さが増しているという風にも思える。
きっと何かを追い求めているのだろう。その結論に達するまでには長い時間が掛かりそうだが。