今日の読了本

連城三紀彦 『戻り川心中』(ハルキ文庫版)

前々から読もう読もうと思った本の一冊であった。
今月光文社文庫から新装版が出てしまったので慌てて。*1
先日読んだ『美女』のあまりのトリッキーさにこれはどうなのだろうと思っていたのですが、
さすがに最初期の作品なので、トリッキーな作品ではあるものの、分かり辛いということはなく、むしろ分かり易い。
文章が硬質で静謐さを湛えているので、少々取っつきにくいところはあるのですが、
読み始めるとずんずんと引き込まれていくのです。
そして、その短編ひとつひとつ読了していくたびに、目眩く眩暈感を覚えることになるでしょう。
最近の作品では、叙述トリックでばかり感じていたそれを、そうではない作品*2から感じることができたのは、新鮮な体験でありました。

明治から昭和にかけての歴史の流れ、風俗などに関しての知識が深ければ、よりいっそう楽しめるのではないでしょうか。

*1:理由になっていない。

*2:断言しづらいものもありますが