今日の読了本

「天使のナイフ」 薬丸岳

今年の江戸川乱歩賞受賞作。
あいかわらず、主人公は普通の人ではなくて、何か特殊なスキルないし状況下におかれている、と言う作品が受賞している。
まあ、それはさておき。
情報の提示の仕方が上手いのでするすると読めてしまう。
少年犯罪というタイムリーな話題を扱っているのだが、それに対する結論もどちらの立場におもねるということなく提示されているのに好感を持った。
ただ、終章はミステリとしては良いのだが、多少やりすぎの感が否めなかった。

「螺旋に回転する世界」 菊池勇生

どこにも記述はないが、この作品は絶対にJDCトリビュートとして出したかったのだろうな、と確信した。
けれど、それとして出すことは拒まれたに違いない、とも思われた。
L犯罪、ブルーIDカード。色々とJDCシリーズ発祥の言葉が恥ずかしげも無くちりばめられている事から、容易に想像されることだろう。
名探偵の解決した事件の名前を連ねて、興味を惹くという手法も非常に似通っている。
ただし、あまりに解決にいたるプロセスが雑にすぎる。
表紙が金子一馬のイラストであることから、この作品はどちらかと言えばライトノベル的な作品、と想像する。
ならば、作品内の警察が半年も放置していた解決への手がかり*1などは、比較的早期に辿り着かねばならないだろう。*2
その後の手がかりの提示など、いかにもご都合主義と言わんばかりの椀飯振る舞い。
肝心の探偵とその相方のキャラクターの書き込みに関しても、弱いと言わざるを得ない。
解決編も「半分」投げっぱなしと言うのはどういうことだろう。
正直、けなす言葉がつきぬほどひどい、と言いたくなる。*3
最後まで読めたので途轍もなくひどい、と言うわけではないのだが。

最後に。
佐藤友哉」に対してのふりがなが「さとうともや」となっていたのはいくら何でも酷すぎると思いました。
ユヤタンがあまりにも可哀想すぎます。
目の前でサインをもらった唯一の作家なので。

*1:リアリティのある作品ならば怒りこそあれ歓迎されないだろう手がかり

*2:名探偵が登場しないと辿り着けない手がかりとはとても思えないものだった!

*3:筆舌に尽くしがたいほどひどい、とも言い換え可能。