「学校を出よう! 3」

期せずして、先日の「透明人間の納屋」と同様の密室からの人間消失もの。
ただ、そういった趣向のミステリとして読もうとすると、大いに足を掬われる。
何しろ解決編が半分すぎた段階で登場し、それが終わるとまた新たな事件が生じているのです!
さらに、この物語はある意味「何でもあり」の世界なので、どのようなことが起きようとも「ふーん」という一言で流すことが可能。
さらに、その世界観を納得させようという意識が乏しい。
奇怪な事象が起き、それを解決し、(その物語の)世界を修復する。
ある意味これがおきまりのパターンなのですが、物語自体の世界観の共有が読者との間でいまいちうまくいっていない。
故に解決においてのカタルシスが全くない。
前作は学園外が舞台だったせいか、世界観の共有が比較的うまくいっていた。
しかし、これが舞台を学園へと転向させると、SFミステリとして成立させるために最も重要な要素、世界観の共有が全く機能しなくなる。

各種能力がありふれすぎているのだ。
何があってもおかしくない世界に、論理の刃は著しく弱い。
そもそも機能し得ないのだ。

故にこれは設定を誤っているとしかいえない。
あるいは、ミステリ的*1に解決しようというのが誤りだ。
言葉で解決せずに行動で解決する。それがこの物語における正しい解決ではないのか?
要素要素の結合がうまくいかず、分離している印象を与えているのも、この作品の欠点だ。
「萌え」+「SF」+「ミステリ」を行おうとしているようだが、相性が悪いわけでもないのに、けんかをしているのだ。
お互いがお互いの味を殺し合っている。
故にこの物語は煮え切らぬ印象を与える。

*1:この話の場合名探偵が犯人に向かって解決編を喋る、ということ