ファウスト

といってもゲーテの作品ではなく、今月創刊された雑誌のことだ。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=0027030
発売当日に買ってはあったものの、ごたごたしていて結局読み終わったのはこんな日になってしまった。
取り急ぎ感想めいたものをちょこちょこと。

・ドリル
 山本英夫の「ホムンクルス」と、穴を開ける場所が同じだ。
 だからといって同じ作品になるはずもなく。
 想像通りに暴力的なのはこの人の長所であり短所でもある。
 妄想・空想・仮想に現実は勝てるのか。
 負けたようで勝ったようで。
 そういったところはどうも投げっぱなしだ。
 はっきり言って直球ではなく変化球なのだろう。
 
・赤
 昨年行われていた「文学フリマ」の、「灰色のダイエットコカ・コーラ」を呼んでいた方が、
 よりいっそう内容の理解を深めるかと思われます。
 キャラクターはほぼ同一ですし。
 「フリッカー式」みたいに弾けてない。
 ただ陰々滅々とした暗闇の中を手探りで歩く日常生活を、
 淡々と純文学めいた手管で描出されていくだけだ。
 つまらないわけでもない代わりに際だって面白いというわけでもない。

・りすか
 ミステリとしてみると、意外性はないし至って凡庸だ。
 魔法少女ものとしても、新味を見いだそうとすることは至って困難だ。
 はっきり言うと主人公との関わり合いにおいて、関係性において、
 今までにないような試みを行っているようではある。
 続編があるようならば今後に期待である。

・失われた時間
 中村俊介のイラストにつきる。
 あのインパクトでぐいぐいと読み進めることを余儀なくされる。
 なんだかわからないうちに始まり、すべてが終わる。
 書かないことに意味があるのかもしれない。

・全体として
 雑誌である、というよりも前に、同人誌であるような肌触り、であった。
 小説のそれではなく、コミケとかで取り扱われる、漫画のそれである。
 編集者の陰の垣間見える。それどころか目視することすら可能な。そんな感じ。