7月の読了本

一日一冊ペースを目指していたものの、結果は27、脳味噌の交通整理が利いていないのか、それとも読書への時間の割きぶりが足りないのか。

7月の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:8030ページ
ナイス数:58ナイス

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ・ミステリワールド)夏の王国で目覚めない (ハヤカワ・ミステリワールド)
三島加深ファンの集いで起きる事件。自分を騙りつつ、遭遇する事件は、どことなく地に足の付かない、まるで夢の中の出来事のようで。結末に辿りつくことで、読者であるわたしたちは、ようやく、その夢から、醒めることができるような気がする。ただ、その夢を形作る一端である、三島加深にあまり魅力を感じられなかったのは、こちらの努力不足だったのかもしれない。
読了日:07月31日 著者:彩坂 美月
サクラダリセット4  GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)
この人の作品は読んでいてTRPGのルールに基づいた小説のような印象が拭い去れなかったのですが、短編集となるとその香りが、一掃されているとまではいえないもののほとんど分からない程度に薄まっていて。未読の長編群でもより薄まってるといいなあ。この作品集中では……シリーズ外短編の「ホワイトパズル」が一番甘酸っぱくって好きです。
読了日:07月30日 著者:河野 裕
消失グラデーション消失グラデーション
虹の色を七色、とするのは日本だけ、と聞いたことがあります。それだけ繊細に色を扱っているのだなあ、ということでもありますが。この作品も、あれやこれやの境界を、グラデーションを、繊細に描き分けて。デビュー作でこれをやってしまう神経に、脱帽です。読了後、アニメ化もされたつだみきよ作品を再読したくなったのは、いうまでもありません。
読了日:07月26日 著者:長沢 樹
幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)
中折れの、話をTLで読みつつの遊女のはなし、妙な共時性を感じながら。今までのシリーズになく穏当な事件(人死には出るものの大方自殺にしか見えない)だったせいか、第三部が終わる寸前まで、あまりピンと来ていなかったのですが、第四部が進行するにつれじわじわと押し寄せてくるキモチワルサ。解決しても煮え切らないのもまた恐ろしく。夏に相応しい薄気味の悪い作品であったなあ、と。
読了日:07月26日 著者:三津田 信三
冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)
ギャルゲーを愛し、ギャルゲーを憎む、すべての人々に。ホワルバ2から丸戸さんを知ったわたしとしては……こんなにギャグ満載の話を書く人だったのねえ、と。どのあたりで笑ったかとか調査するとどのあたりの世代のひとなのか分かるかもね。愛知近郊ネタがさりげなく差し込まれているのも、お約束通りなんでしょうねえ平和さん。
読了日:07月23日 著者:丸戸 史明
あやしや/いなき (講談社BOX)あやしや/いなき (講談社BOX)
荒川沖にできたトイザらス日本一号店はもう閉店してしまってないのねえ……(挨拶)。デジタル時代劇、同音異義語を操る手筋はなかなか興味深かった……のですが。果実ごろっとミックスジュース、ただし混ざりの足りない、という印象。SF、時代物、ファンタジィ、どのジャンルとしてみてもなんか喰い足らない感じがして。せっかくのおいしい作品なのに最後の仕上げが足りていないように思えた。時代物で行くならもっとSF要素減らすとか、SFで行くなら時代物の要素を削るとかしたら良かったのかなあ……
読了日:07月23日 著者:沖 ハサム,荒川
放課後はミステリーとともに放課後はミステリーとともに
ユーモアミステリーの連作集。ドラマ版は見れてないんですが、果たして、一部の趣向をどう処理したのか、わたし、気になります!ど真ん中の推理小説、としてはもの足らないところがないとはいえないですが、面白かったです。
読了日:07月21日 著者:東川 篤哉
インサート・コイン(ズ)インサート・コイン(ズ)
ゲーム愛に充ち満ちた傑作。さすがひねくれた作品をものし続ける詠坂雄二、この作品も一筋縄ではいかず。光文社ソフトカバーで刊行されている二作品とも若干リンクがあるようですね(当方未読)。このタイミングで読んだので、最後の「そしてまわりこまれなかった」で言及されている新作ドラクエを、"X"と誤解しそうになりますが、初出を参照する限り間違いなく"IX"であるなあ、と。再読時に忘れそうなのでメモ。
読了日:07月20日 著者:詠坂 雄二
真夏の方程式真夏の方程式
短編ガリレオシリーズの長所と、長編ガリレオシリーズの長所を足して割った作品のように思えた。ただ、残念なことに割る数は足したものの数よりも多いように感じられたが。ドラマの影響を受けてか、湯川と草薙と内海が登場するたびに、どうしても俳優さんの姿が脳裏をよぎってしまう。作品も影響を受けたんでしょうかねえ……
読了日:07月18日 著者:東野 圭吾
トッカンvs勤労商工会トッカンvs勤労商工会
前作では見えていなかった面が次々と露わになる第二巻。同じところで立ち止まっていられないのが、大人になることよのう、と。正直、最終エピソードは自分の立場を顧みて、非常に心が痛むことこの上なかったのですがそれはまた別の話。
読了日:07月17日 著者:高殿 円
聴き屋の芸術学部祭 (ミステリ・フロンティア)聴き屋の芸術学部祭 (ミステリ・フロンティア)
死神名探偵コナンのように、屍体を呼び込むような印象を受ける探偵でないので、全四篇読み終えたあとになんでこんなに屍体が転がってるんだろう、と思わずにはいられませんでした、が。想定していたところ以外から提出される答案群、大変面白く読みました。凄く期待できる新人さんだなあ、と思うのと同時に、わたしよりも年下なんだ……嫉妬してしまうわぁ、というのもあり。
読了日:07月16日 著者:市井 豊
ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)
おそらく今回のアニメ化の掉尾を飾るであろうエピソード。なるほど、一学年の終わり、というわけですな。前三冊の間でもあったような気のする、中身空っぽの人形には何を入れる?という問題の、真の解決編で。結論としては真に空っぽだったわけではなくて、ちゃんと核になるものがあって、それを包み込むように、というオーソドックスな。結果論かもしれませんが、確固たる自我を持ち得ないこの不安定な時期を設定した勝利のような。続きも楽しみです。
読了日:07月16日 著者:庵田 定夏
衣更月家の一族 (ミステリー・リーグ)衣更月家の一族 (ミステリー・リーグ)
どう見ても関わり合いのなさそうな事件が四本、立て続けに描かれ。読み手としては何か繋がりがあるだろうと思って読み進めるわけですが……一番大きな繋がりは、堂々と表紙に描かれているという、ね。斯くある驚きは、かなりな衝撃を以てわたしに及んだわけですが、如何せん肝心の繋がりの描写が小盛りすぎだったように思えます。前作は一部のひとに分かり易かったそうですが、それを潰したおかげで分かり辛くなりすぎた気がします……orz
読了日:07月14日 著者:深木 章子
墜落世界のハイダイバー4 (角川スニーカー文庫)墜落世界のハイダイバー4 (角川スニーカー文庫)
おれは人間をやめるぞ!ジョジョーーーーッ!!といったひとがえらい目に合う、そんな最終巻。比較的短めな物語だったせいか、かなり綺麗にコンパクトにまとまった印象。若干打ち切りの香りを感じなくもないですが……綺麗にまとまっているのでこれはこれで。本編の問題ではないんですが、急に挿絵が右側ページに来ると戸惑いを感じざるを得ないのです。
読了日:07月13日 著者:六塚 光
彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)
倒叙ミステリ、でもあるけれど、今作においては、ホラー的な凄みの方が上回っているような気さえする。けして犯人には同情し得ないのに、あまり反対側の探偵役に共感できないのはなぜだろう。このシリーズの表紙デザインは毎度毎度好きです。想像の余地が狭められつつも広がっていくあたり。
読了日:07月11日 著者:石持浅海
GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス‐ (角川文庫)GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス‐ (角川文庫)
いままでのsシリーズと比べると薄味な、しかし全編通してみるとなくてはならぬエピソードの詰まった作品集のように思えました。最後のsシリーズということで、別れ、災厄のイメージがいっそう濃厚に漂い、そそくさと駆け足で続編を追いかけたい気持ちに駆られます。
読了日:07月11日 著者:桜庭 一樹
恥知らずのパープルヘイズ −ジョジョの奇妙な冒険より−恥知らずのパープルヘイズ −ジョジョの奇妙な冒険より−
もう、愛しか見えない。一応5部その後という体裁を取っているものの、JOJOの5部までの物語を大方引き受けたような、そんな物語で。よかったです。
読了日:07月09日 著者:上遠野 浩平,荒木 飛呂彦
黒猫の遊歩あるいは美学講義黒猫の遊歩あるいは美学講義
凄くアルコール度数の高いお酒を、うまく稀釈して呑みやすくした、そんな居酒屋のカクテルのようなミステリ。さすがに無理筋だろう、と思うようなものもいくつかありましたが、この現実と陸続きのようでどことなく夢遊しているような、浮遊しているような雰囲気で、うまく融和されているようで。分からないことは確かに分からないけれど、雰囲気でうまく飲み込まされてしまったようで。「黄金虫」しか読んでないポーはもっと読まなきゃなのです。
読了日:07月09日 著者:森 晶麿
修羅場な俺と乙女禁猟区3 (ファミ通文庫)修羅場な俺と乙女禁猟区3 (ファミ通文庫)
終わっちゃった……。どこぞの漫画のキャッチコピー、「予想は裏切り、期待は裏切らない」を地でいく展開でしたな。おおよそミステリ者が読みそうもないジャンル且つタイトルなこの作品でしたが、意外と食い合わせ、よかったかも。あまりに駆け足な展開だったことは、否定しませんけど。
読了日:07月07日 著者:田代裕彦
修羅場な俺と乙女禁猟区2 (ファミ通文庫)修羅場な俺と乙女禁猟区2 (ファミ通文庫)
黒いトランク、ふたたび。運ばれてくるのは屍体ではなくて不幸。ただし一部のひとにとっては幸福なのでしょうけれど。で、前作読んだ段階での予想は外れ、今回の攻略対象キャラはおのひと。表紙を見ればわかるというやつですね。変化球を投げては来ましたが、俺はまだ睦月攻略を諦めてはいないぞジョジョー!というやつで。
読了日:07月07日 著者:田代裕彦
葬式組曲 (ミステリー・リーグ)葬式組曲 (ミステリー・リーグ)
屍体のある「日常の謎」と呼ぶのがが相応しい(と思う)連作短編集。「日常の謎」でありがちな結論の腑に落ちなさは若干残るものの、連作短編集であるということの強みを生かしてそれすらも取り除かんとしているようで驚かされるばかりでありました。
読了日:07月06日 著者:天祢 涼
時が滲む朝時が滲む朝
中国に留学しているからこそ分かる、中国の大学内の様子のリアリティ。ただ、文学的どうこうという視点からいうと、日本語で書ける中国人の小説という域を抜け出ていないと思う。中国人であったから書ける、ということであって、その立場を活用しきっている、としか。芥川賞を取っていなければこう思うこともなかったんでしょうけれど。もちろん、取っていなければ読むこともなかったようにも思いますが。
読了日:07月06日 著者:楊 逸
ストーリー・セラーストーリー・セラー
前半は再読。後半が初読で。転んでもただでは起きない、という、作家の業を感じる一冊。ベタ甘なだけの恋愛ではなくて。苦み走った、カカオ分が普通のものより多いチョコレートのような。いつもの有川浩作品よりは、厳しい印象を受ける、そんな一冊。
読了日:07月06日 著者:有川 浩
虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)
「スパイラル」の変奏にも思えた、そんな作品。あるキャラクターが『小説 スパイラル』の登場人物と被って見えたからなのだけれど。もちろん、それだけが原因なわけもなくて、大方の男女を入れ替えると(ネタバレ抵触の恐れありのため後略)。設定なり何なりで想像させられたのは『妖魔夜行』だったり『妖怪シリーズ』であったりなのはいうまでもないことで。
読了日:07月05日 著者:城平 京
道化師の蝶道化師の蝶
本書く小説、だった気がしました。相変わらず尻尾を掴ませない書きっぷりではありますが、捕まえきれなくとも影くらいは、垣間見えたような。この人にしか書き得ない小説、であることに関しては間違いなく唯一無二であると思う。
読了日:07月04日 著者:円城 塔
式霊の杜 (講談社X文庫―ホワイトハート)式霊の杜 (講談社X文庫―ホワイトハート)
献本でいただいた本です。凄く読みやすかったです。中華風ファンタジー、なんですが、秦末期の実在の人物の名前を使っているおかげでどのような舞台かの想像は容易かった!けれど、それが原因で違和感を覚え通しで。ヒロインの名前の読みが唯一訓読みだったのも。せめてせいしょとかそんな感じの方が……。ということで、中国の歴史にそんなに詳しくない、中華風ファンタジーファン向けの本なのかな、と。
読了日:07月04日 著者:いちだ かづき
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
思い込み、をぶち壊してくれる内容が下巻は多め。ミステリっぽく見ると後出しのように思えても、実際はあくまでも事実に基づいた推論で、欠けた事実に基づいた読者側の思い込みの所為で後出しに見えるだけ。いやはや、凄いものを見せてもらいました。
読了日:07月03日 著者:ジャレド・ダイアモンド

2012年7月の読書メーターまとめ詳細